将棋界の疑問

将棋の打ち歩詰めとは?なぜ反則なのか?その起源も解説

 

同じボードゲームであるチェスやチャトランガとは違い、将棋にはいくつかの特殊なルールがあります。
相手の陣地に入ると駒が成れることだったり、二歩の禁止等々…。
その中でも”打ち歩詰めの禁止”は最も異様なルールと言えるでしょう。

二歩がダメなのは知っているけれども、打ち歩詰めがダメなのは知らなかったという方も多いのではないでしょうか?

この記事では打ち歩詰めと、その起源について解説しています。

打ち歩詰めとは

打ち歩詰めとは”相手玉を詰ます際に、持ち駒の歩を打って詰ますこと”です。

たとえば下のような局面で、手番が先手の場合。
相手玉の前に持ち駒の歩を打つと詰んでしまいます。

しかし、将棋のルールでは、この打ち歩詰めは反則とされています。

ちなみにこの局面で、持ち駒は”歩”ですが、歩以外の駒、例えば香車や銀のような駒は自分の手駒にある場合は相手玉の前に打って詰ましてもOKです。

 

打ち歩詰めの起源

打ち歩詰めという、とても奇妙ルールを知って、誰もが思うことがあります。

「なぜ打ち歩詰めは反則なのか?」

これにはいろんな説がありますので、順番にご紹介していきます。

 

イカサマ封じ説

歩だけは盤上に数が多すぎるせいで、隠しもっていた歩を打ってもイカサマだと気づかれにくいから
賭け将棋が一般的な時代に、駒を懐に忍ばせておくことが多々ありました。
そして、歩は数が多いからバレにくく、いざという時に役に立ちます。
これが飛車や角だと、盤上に2枚ずつしかないので、すぐにイカサマだとバレてしまいますよね。
しかし、歩は盤上に18枚もあります、
19枚目のイカサマの歩が懐から盤上に打たれても、パッと見わかりません。
序盤や中盤なら、後々「あれ?歩が19枚あるぞ?」なんてことになったかもしれませんが、最終盤なら、イカサマの歩を打って(打ち歩詰めで)勝っても、すぐに盤面を片付ければ有耶無耶にできます。
そのため、あらかじめ歩を打って詰ますことは反則として取り決めていたという説。

 

羽生説

羽生先生曰く

打ち歩詰めがなければ先手が有利だから

とおっしゃられています。

では、どうして、打ち歩詰めのルールは、後手に有利に働くのか?
羽生説を解説します。

ボードゲームは基本的に先手有利ですオセロやチェスやチャトランガは先手の勝率が高いことで知られています。
将棋も同じように先手の勝率が後手の勝率よりも少しだけ高いです。
ゴキゲン中飛車が流行した頃に、後手番の勝率が先手番の勝率を上回ったこともありますが、基本的に将棋は先手番のほうがやや有利で、プロ棋士の対局では先手番の勝率は52%ぐらいです。

では、突然ですが、将棋の神将棋の神が将棋をした場合を考えてみてください。

両者が最善の手を尽くし、一手たりとも悪手はおろか、次善手さえ指さなかった場合。。。

 

最後は打ち歩詰めになる。

 

というのが羽生先生の考えです。

上記のことを羽生先生が明言したわけではないのですが、将棋は取った駒の再利用や、敵陣で駒が成るなどの独自のルールで先手と後手を互角に近づけています。

二歩や、打ち歩詰めの禁止などの、奇妙なルールは、将棋という規則的なボードゲームにある種の不協和音を築いています。

二歩や打ち歩詰めのようなルールがない将棋ならば、先手の有利で、将棋の神と将棋の神が対局すれば、100%先手が勝つことになるでしょう。
しかし、この打ち歩詰めという盤上に不協和音を築く特殊なルールが加わることで、必ずしも先手が勝つとは言いきれないものになっているのではないでしょうか?

 

偉い人が嘘ついた説

昔々…。
将棋でめちゃくちゃ偉い人が、打ち歩詰めで負けそうになった時に…。

将棋の偉い人「(あかん!歩打たれて詰みや…)」

将棋の偉い人「(せや!打ち歩詰めはダメってことにしたろ!)」

将棋の偉い人「お前ルール知らんのか!?」「打ち歩詰めは反則やぞ!」

相手「ホンマか!」「知らんかったわ!」「アンタが言うんやから本当やろ」

と、咄嗟に元々あるルールかのようにして言ったことから、そのまま定着した説。

 

詰め将棋から説

打ち歩詰め回避のロジックが詰め将棋の世界では盛り上がるため、詰め将棋のルールで打ち歩詰めの禁止があった。
そしてそのまま、そのルールが指し将棋でも当たり前になった説。

 

不成りを可能にする説

打ち歩詰めを回避するために、飛車、角、歩の不成りが可能になります。

相手の陣地に入ると駒は”成り”か”不成り”かを選択できますが、飛車、角、歩のような駒は、成っても元々の動きにプラスアルファされるだけなので、不成りにする人はいません。
しかし、打ち歩詰めの禁止が、この不成りを可能しました。

不成りが実現した有名な対局が谷川浩司vs大山康晴の王位リーグでの一局です。

この局面での手番は先手の谷川先生ですが、このあとに指した一手が伝説になっています。

4三角不成り!

もし、ここで自然に4三角成りとしていれば、最後は打ち歩詰めとなり、後手の大山玉は詰みません。

角を不成りとしたことで、後手玉に詰みが生じています。

加えていいのかは微妙ですが、電王戦でも永瀬先生が角不成で将棋コンピュータ(Selene)に勝っています。

その時の記事はこちら→【電王戦FINALまとめ】3勝2負で初のプロ棋士側の勝利!

 

無礼説

一番下っ端の兵士が裏切って主を討つのは無礼だから、打ち歩詰めは反則になった。

さらに持ち駒の歩は裏切りものであり、下剋上の風潮のあった戦国時代にマナーからルールに昇格した説。

なぜ打ち歩詰めだけなのかについては
突き歩詰めについては、盤上の相手の歩は元々から敵なのでOK。そして、詰ます前に歩が王の前におり、歩が王に一礼しているからOKとのこと。

”持駒使用の謎ー日本将棋の起源”という本でも紹介されています

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武士説

将棋をしている武士「打ち歩詰めとは武士にあるまじき行為!腹を切れ!」

 

ローカルルール説

元々、将棋はローカルルールが多く、二歩や、打ち歩詰めもその一種説。

 

意味ない説

意味のないルールだったが、定着してしまった説。

 

以上、打ち歩詰めについてでした。

 

 

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