A級順位戦で事件が起こりました。
羽生善治九段(当時)vs豊島将之(当時)の一戦から。
AIの評価値が”勝勢(95%)”を示しているのにも関わらず”投了”してしまった羽生九段。
中盤から終盤にかけて二転三転した激闘局を振り返ります。
なぜ投了してしまったのか?見落としなのか?真相を究明してみました。
二転三転した激闘局
2020年12月25日。
A級順位戦の第6回戦で事件が起きました。
対局者は豊島将之竜王(当時)と羽生善治九段(当時)
”横歩取り”で進んだこの将棋は後手の豊島先生の勝勢になります。
下の局面は75手目。
この局面で”歩”を持っている後手が”8五歩”と打てば先手玉は詰みです。
しかし、この手は”打ち歩詰め”という禁じ手。
反則なんです。打ち歩詰めの記事はこちらから↓
この”打ち歩詰め”の局面が出ること自体かなり珍しいのですが、羽生先生はこれでギリギリ耐えるという離れ技をやってのけます。
そこから”角”のタダ捨てといった妙手等が出て豊島玉を追い込み、羽生先生が勝てば渾身の一局となるであろう将棋でした。
最後は両者1分将棋になり、逆転に次ぐ逆転という大激戦に。
そして127手目の先手の”7七金”で評価値は羽生先生の”-700”
下図は羽生先生の負けだと思われた局面です。
以下は後手が”8五歩”と突いて、7七の金を取れば後手の勝ち筋に入ります。
しかし、ここで後手の豊島先生が指したのは”6五歩”と金を取る手。
この手が大悪手でした。
この手で一気に形勢逆転し、評価値はなんと羽生先生の”+900”
大逆転が起こり、このあとは『8三馬、同桂、7八金…』で先手の羽生先生の勝ちだったんですが、ここで事件は起こりました。
羽生九段の次の手はなんと”投了”だったんです。
AI評価値が勝勢を示しているにも関わらず投了してしまうという前代未聞の出来事が起こりました。
なぜ投了したのか?
この将棋はかなり難しい将棋で、しかも両者1分将棋。
終局時刻は深夜0時を過ぎていました。
体力の消耗や疲労による見落としがあったのかもしれません。
いずれにせよ、最後のほうは形勢が二転三転していて、どちらが勝ちになってもおかしくないような将棋でした。
おそらく羽生先生自身『8三馬、同桂、7八金…』の手は見えていたと思いますが、そうしたとしても負けだと判断してしまったものと思われます。
投了図だけを見ても正直どっちがいいのか全然わかりません。
もちろんAIの評価値が絶対ではありませんが、こんなこともあるんですね。
A級順位戦で2勝3負だった羽生先生はこの対局に負けて2勝4負になりA級残留に黄色信号が点灯しました。