将棋界の事情

【ノーマスク事件まとめ】佐藤天彦九段と日浦市郎八段がマスク付着用で反則負け

将棋界のノーマスク事件についての記事です。
佐藤天彦先生、日浦市郎先生の2名が対局中のマスク不着用で反則負けとなりました。
以下、一連のマスク不着用事件のまとめです。

マスクについての臨時対局規定

2022年2年、日本将棋連盟はコロナ禍において、対局中の棋士、女流棋士が一時的なケースを除いて、マスク(原則として不織布マスク)を着用しなくてはならないことを義務として定め、着用しない場合は違反として、反則負けとすることに決定しました。

以下、日本将棋連盟HPよりマスクについての臨時対局規定抜粋

第1条

対局者は、対局中は、一時的な場合を除き、マスク(原則として不織布)を着用しなければならない。但し、健康上やむを得ない理由があり、かつ、予め届け出て、常務会の承認を得た場合は、この限りではない。

第3条

対局者が第1条の規定に反したときは、対局規定第3章第8条冒頭頭角号の違反行為に準じる反則負けとする。

第4条

前条の反則負けの判定は立会人が行い、立会人がいない対局においては、対局規定第3章第9条第4項の順序に従い、立会人の住を代行するものが行う。この判定に不服がある対局者は、対局規定第3章第8条第6項に準じて、判定後1週間以内に、その内容を常務会に提訴することができる。

すごく簡単に言うと…。
「対局中にマスクしないと立会人の裁定によって反則負けになります。」
ということです。

 

佐藤天彦九段マスク不着用により反則負け

2022年10月28日のA級順位戦4回戦、佐藤天彦九段vs永瀬拓矢王座(当時)にて。

対局開始時は両者共にマスクを着用していたのですが、局面が終盤に入り、佐藤天彦先生が飲み物を飲んだ際に、マスクを外し、そのまま対局を続行。(マスクの片ひもは左耳にかかっていた)
佐藤天彦先生はそのまま30分以上マスクをしていない状態が続きました。

そのことを永瀬拓矢先生が運営に指摘し、佐藤天彦先生は反則負けとなってしまいました。

当時、将棋会館内に立会人が不在で、連絡を受けた鈴木大介九段が急遽駆け付け、佐藤康光会長らと協議した上で反則負けが決定したようです。

以下、その時の様子。

佐藤天彦先生が長考の末に指した124手目の後、日本将棋連盟の理事である鈴木大介九段が対局室に入り、対局を中断。

鈴木「対局中、失礼します。」
佐藤「はい」
鈴木「ちょっと席を外してご相談がありますので、一回対局を止めてもらってよろしいですか?」
佐藤「え?はい」
鈴木「すみません。じゃあちょっとあちらの方で説明しますので、対局者に来ていただいて…」

その後、関係者は対局室の外に移動し、それから8分後、佐藤天彦先生はうなだれた様子で対局室に戻り、手を目にあててがっくりした様子。

残り時間は永瀬16分、佐藤2分。
佐藤九段有利という124手目の局面で、佐藤天彦九段のマスク不着用による反則負けとなりました。

噂によると、永瀬拓矢先生は佐藤九段を反則負けにするよう5回も要求していたようです。

この衝撃的なノーマスク事件をうけて、各界から賛否両論の声があがりました。

茂木健一郎氏
「そういう規定があるから、という考え方もわからないわけじゃないけど、それやるとみんなが不幸になるし、そもそももうマスクの着用についての杓子定規的なやり方、やめたほうがいいと思うよ。悪法も法とか言うけど、それで日本が不自由になって悪くなったら意味ないから」

乙武洋匡氏「対局中って、喋らないですよね」

百田尚樹氏「将棋界ってアホの集まりなの?」

倉田真由美氏(漫画家)「日本が今、いかに異常か如実に現れている案件。後世に残る汚点」

堀江貴文氏「永瀬、せこい」

佐々木大地先生「これはおかしい」

三枚堂達也先生「あまりのことにとてもショックを受けています。」

山本博志先生「残念でショックでこれはおかしいと思うということだけ呟きます。」

 

不服申立書の提出

その後、佐藤天彦先生は処分撤回を求めて、日本将棋連盟に不服申立書を提出し、正式に提訴したことを自身のTwitterで明かしています。

不服申立書の内容

不服申立書は4ページによる文書になっており、約1時間にわたるマスク不着用の事実を認め、深く反省する旨が記されているが、一度も指摘しないまま反則負けとする判定は相当性を欠くと主張し、反則負けの取り消しや、対局のやり直しなどを求めた内容になっていました。

これに対し、将棋連盟の常務会は「他の反則負けも即反則負けとなる」とした上で、臨時対局規定について「注意・警告が反則負けの要件になるとの解釈を採用する」と結論づけました。

以下、プロ棋士の方々の意見です。

山本博志先生

「語れる言葉が少ないのですが、一つ言えるのは将棋界を心から心配するファンの方々の真剣な議論が将棋界をより良くする糧になっているということで、お詫びするとともに、感謝したいです。佐藤天彦先生の文書を読み個人的に共感する箇所が多かったです。ファンの方が安心できる形にしなくてはと思います。」

とある棋士

「永瀬とすれば、このまま秒読みに入ってしまったら、(注意をうながすため)席を立つこともできなくなるので、その前に裁定を出してもらう必要があった。
自分が不利だから、反則負けを主張するなんていうことはありえない。そもそも永瀬と天彦とは仲がよく、遺恨があったわけでもありません。
天彦が将棋以外のことを永瀬に考えさせていた、100%盤上に集中させなかったという時点で、棋士の感覚としては、もうアウトなんです。
注意といいますが、注意されるまでOKというルールではない。マスクに関する臨時対局規定に事前注意に関することが書いてないということは、一時的という表現を常識的に解釈すれば3分でも5分でもマスクを外したら負けとされても仕方がない。
鈴木理事、佐藤康光会長の判断は正しかったと思います。」

SNSでも#佐藤天彦先生の反則負け撤回を求めますというハッシュタグまで出てきたほどでした。

 

それからの両者への影響

ノーマスク事件として、話題になったお二人のその後の影響について。

永瀬拓矢先生は次局の王将リーグ戦の対羽生戦で敗北。

佐藤天彦先生は対局以外の全てのイベントをキャンセルしましたが、次局の藤井聡太戦では、時間ギリギリに入室し、バラの花束を持って登場し、みんなを驚かせました。
誰かにあげるのかと思いきや、そのまま自分の横にバラの花束を置き、対局開始。

Twitter上では「天彦先生」がトレンド入り。

「気持ちの切り替えがナナメ上」
「バラの理由はともかく似合うのがさすが」

香川女流もバラの絵文字をツイート。

バラの送り主と思われる方から「天彦先生申し訳ありません。バラを贈ったのは私です。ものすごく心配で」とあったので、おそらくバラの花束は対局に来る途中に、ファンからもらった物だろうと言われています。

気になる対局結果は佐藤天彦先生の勝ちに終わっています。

 

日浦市郎八段マスク不着用により反則負け

2023年1月10日に行われたC級1組の順位戦で、日浦市郎八段(当時)が平藤眞吾七段(当時)と対局して、マスク着用の規定違反とされて反則負けになりました。
これで、将棋界でのマスク不着用での反則はこれで2例目になりました。

以下、詳細です。

対局開始直後に立会人の小林七段に、平藤七段から日浦七段のマスク着用についての相談がありました。

その時の日浦先生は、いわゆる鼻出しマスクという口だけをマスクで覆い、鼻は露出する着用方法をとっていました。

立会人である小林七段が鼻もマスクで覆うようにと、正しいマスクの着用を何度か促したが、日浦八段はそれを拒否したため、、対局開始から48分後、日浦八段に対し反則負けの裁定が下されました。

最後、日浦八段は「わかりました。裁判します。」と言い残し、会館を去っていったそうです。

日浦先生はマスク着用反対派の棋士として、佐藤天彦先生のマスク不着用での反則負けにも以下のように言及していました。

「そもそもマスクを着ける、着けないは国民にとって任意のはず。強制されるのは心外。新ルールが決まった後でマスクをして二局対局し、負けました。言い訳をするつもりはありませんが、マスクを強制された影響はゼロではないと思います。」

その後の2月1日と7日での対局でも、日浦先生は鼻出しマスクのため反則負けになっています。
このため日本将棋連盟は2023年2月13日、公式戦の対局中にマスクから鼻を出さないよう求めた立会人の指示に従わず、3局連続で反則負けになった日浦市郎八段に対し、同日から対局停止3カ月の懲戒処分を下したと発表しました。
将棋連盟は処分理由について「立会人の裁定や処置に従わず、実質的な対局放棄を繰り返した」と説明しています。

以下、日浦市郎八段の意見です。

「連盟から連絡が来て今回の処分を聞いた時は、やはり軽くない内容だったので深刻に受け止めました。対局禁止は5月12日まで続きますが、棋士にとって4月と5月は試合数が最も少ない時期のため、ある程度の配慮はあったのかもしれない。ただし“今回の処分が不当である”との私の思いは揺らいでいません」

「誤解している方も多いのでハッキリと申し上げておきますと、私はルールを破ったから、今回の処分を受けたわけではありません。ルールに従っていたにもかかわらず“ルール違反”のように捉えられ、処分に付された。これまでの経緯を説明すれば、私の話すことに理解いただける部分もあると考えています」

「実は私はこの規定ができるまではマスクを着けずに対局を行い、立会人などに注意された際にはマスクを着用して将棋を指していました。同規定の施行後は、ずっと“鼻出しマスク”で対局に臨んでいましたが、特に問題視されたことはなかった。実際、規定には“鼻出しは禁ずる”といった言葉はありませんから、違反行為と見なされていなかった証左と考えています」

「対局が始まってすぐ、相手から“マスクを鼻まで上げてもらえますか?”との申し入れがあったのですが、私は“そんなルールはないです”と言って断りました。すると相手は対局室から出て行き、その後、立会人が来て再び“マスクを鼻まで上げるよう”に要請しましたが、私は“ルールにない”との理由でやはり拒否。次に立会人は別のフロアにある事務局まで来るよう言うので行くと、そこに連盟理事の一人がいた。その理事が私に“鼻を出しているのはマスクをしていないのと同じことだ。われわれ理事会はこれから『マスクで鼻までふさぐ』といった規定も盛り込むつもりだ”と言ったのです」

「この理事の言葉からも分かるとおり、そもそも同規定は細かな部分は何も明文化しておらず、きちんとしたガイドラインの体をなしていません。色々な解釈の余地が入り込むルールでは恣意的な運用が行われる可能性があり、棋士に厳罰を科す規定としては大いに問題です。私はこの時の反則負けを“このまま受け入れるような形で終わりにするのは間違っている”と強く感じたので、その後の対局でも“鼻出しマスク”で臨みました」

 

日本将棋連盟は2月28日、対局中のマスク着用を義務化した臨時対局規定について、2023年3月13日付けで廃止すると発表し、政府が新型コロナ対策のマスク着用を、個人の判断に委ねる新指針をまとめたのを受けた措置としています。

 

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