【渡辺明vsボナンザ】コンピュータ対プロ棋士が実現した裏話「あんなに強いんならやんなきゃ良かった」 | ブラジルから王手飛車取り

【渡辺明vsボナンザ】コンピュータ対プロ棋士が実現した裏話「あんなに強いんならやんなきゃ良かった」

渡辺明ボナンザ

2007年、プロ棋士と将棋コンピュータが遂に対決しました。
プロ棋士側は当時竜王3連覇中だった渡辺明竜王(当時)
コンピュータ側はボナンザというこれまでとは思考が違う将棋ソフトでした。
結果は人間側である渡辺明が勝利したものの、この対局の実現までには紆余曲折ありました。
「将棋は遊びではありません」とオファーを断った佐藤康光と「やりたくありません」と断った渡辺明。
「所詮、遊びやで」と説得する当時の将棋連盟会長の米長邦雄の逸話。

 

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将棋ソフトとの対局禁止令

2005年、全棋士へ対局通知が届きました。

その内容は”プロ棋士はコンピュータ将棋ソフトと対局をしてはならない”というものでした。

しかし対戦する際には条件があって”対局料1億円を支払った場合にのみ可

この将棋ソフトとの対局禁止令は将棋ソフトが近年、棋力を上げてきていてプロ棋士を脅かす存在になってきていること。
そして、実際に2005年、プロ棋士である橋本崇載がコンピュータ将棋ソフト”TACOS(タコス)”と対局し、勝利はしたものの終盤までリードを奪われていたという危機感によるものでした。

 

コンピュータ対プロ棋士が実現

2007年、世界コンピュータ将棋ソフト選手権で優勝したのは”bonanza(ボナンザ)”という将棋ソフトでした。

ボナンザは大会で唯一ノートパソコンでの出場でしたが、圧倒的な強さを誇り、初出場にして初優勝という快挙を成し遂げました。

そして、コンピュータ将棋ソフト対プロ棋士が実現するのですが、この実現の裏には紆余曲折なドラマがありました。

まずコンピュータ側ですが、対局料として1億円支払う必要があります。
これは主催者である”大和証券”が支払ったものと思われます。

ちなみに対局者へはその1割の1000万円が対局料として支払われたそうです。

 

佐藤康光へオファー

一方のプロ棋士側はというと、人選に苦戦していました。
苦戦していたのは当時の将棋連盟会長だった米長邦雄永世棋聖です。

1億と3手読む男”こう呼ばれている佐藤康光九段に最初の白羽の矢が立ちました。

1億手読むコンピュータと1億と3手読む男が対局したら面白いだろうと考えたわけです。

しかし、佐藤康光先生は断ります。

「そんな堅いこと言わずに受けてくれ。1000万円の収入になる。所詮、遊びじゃないか。」

と、それでも説得しようとする米長邦雄会長(当時)に佐藤康光九段は怒ります。

「米長先生。そこに正座してください。」

バツが悪そうに正座した米長会長に佐藤康光先生はこう言いました。

プロが将棋を指すのに、遊びというものがありますか!

 

渡辺明へオファー

こうして、佐藤康光九段は説得できず、次に米長会長が声をかけたのは渡辺明竜王(当時)でした。当時の渡辺先生はまだ22歳。
しかし、実力では竜王位3連覇をしたばかりの自他共に認める将棋界トップの棋士でした。

米長のオファーに「やりたくありません」と初めは拒否した渡辺先生。

「遊びやで。一局やって賞金ももらえるから一局だけ付き合ってくれんか?」

と、佐藤先生に怒られたことは忘れて、お決まりの口説き文句で説得する米長会長。

「お断りします」

と渡辺明。

しかしこの後、どうにかこうにか米長の説得が功を奏したようで、渡辺明は「私は嫌でしたが、頼まれたので引き受けました、と公表すること」を条件として、コンピュータと対局することを引き受けました。

コンピュータとの対戦を引き受けたことについて渡辺明は以下のように述べています。

「本当はやりたくありません。解説してるほうが楽なんですけど…」

もし負けたら?という質問に

「他の棋士の方々にも迷惑がかかりますよね。とりあえず棋士総会かなんかで謝るしかないと思います」

 

渡辺明VSボナンザ

渡辺明竜王(当時)とボナンザが対局する会場はこれまでの将棋の対局は違った雰囲気に包まれていました。

席上対局で、まわりには観客が取り囲むような舞台になっている。
入場時はプロレスのような派手な演出が加わり、将棋の真剣勝負というよりはイベント色の強い将棋の対局となりました。

しかし、対戦する渡辺先生はもちろん、ボナンザも本気モードで調整を重ねていました。

渡辺明先生は戸部誠先生や村山慈明先生ら棋士仲間とボナンザの研究をするなどで準備をしており、一方のボナンザは”全幅探索”に”選択的探索”も取り入れるというパワーアップしたバージョンで登場。

持ち時間は2時間。切れたら60秒。先手のボナンザの初手”7六歩”で対局は始まりました。

戦型はボナンザが”四間飛車”にしてからのお互いが”穴熊”に組む”相穴熊”の持久戦に。

途中、人間にはできないような手が出てくるなどボナンザが渡辺明を驚かせる場面もありましたが、結果は112手で渡辺明の勝利。

後日、渡辺明はこう語っています。

「あんなに強いんなら、やんなきゃ良かった」

 

渡辺明vsボナンザの詳しい対局の記事はこちらから↓

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