羽生善治「藤井聡太が現れて将棋界全体のレベルが底上げされた」
数々の最年少記録を叩き出し将棋界のトップを走る天才棋士藤井聡太。
その強さの秘密は「負けず嫌いな性格」「符号読み」「1万を超える詰将棋を解いた基礎力」からなるもので、頭一つ抜き出た存在として注目されている”藤井聡太”の強さを”心技体”でまとめてみました。
将棋AI超えの終盤力
藤井聡太先生の脅威の終盤力について、初のタイトル獲得となった渡辺明棋聖(当時)との棋聖戦五番勝負を見ていきましょう。
まず第一局では終盤に渡辺先生の16手連続王手を間違えることなく、受け切り勝利を納めています。
ちなみにこの16手連続王手は1手でも間違えると渡辺勝ちというドキドキハラハラの終盤戦でした。
しかし、この時の藤井七段(当時)は難解な局面の時に出る”独り言を呟く”という癖もでることなく、落ち着いた表情で読み切ってしまっていました。
この終盤力の強さや読みのスピードは何万と解いてきた”詰め将棋”によるものだと考えられています。
そして、さらに凄い終盤力が棋聖戦の第二局で全員を驚かせた”3一銀”です。
これは先手の渡辺明先生が6六角と打った局面です。
後手は2二にいる金を守る手を指さなければいけないのですが、藤井七段(当時)はここで誰も予想していなかった”3一銀”を指しました。
この手は将棋ソフトでも候補手に挙げていない手でしたが、結果は藤井勝ち。
まさに”AI超え”ですね。
この3一銀という手は将棋ソフトに5億手読ませても候補手に挙がらない手なのですが、6億手読ませてみると、最善手として”3一銀”を突如として挙げてきます。
「常識に捉われない手を指すのが藤井将棋」とトップ棋士である広瀬章人九段は述べています。
以下、敗れた渡辺明の感想です。
「負け方がどれも想像を超えてるので、もうなんなんだろうね、という感じです」
渡辺明のブログより引用
以下、AI超えの終盤力のもとになっている”心技体”について記述しています。
心:超負けず嫌いな性格
子供の頃、藤井聡太先生が谷川浩司先生に2枚落ちで指導対局を受け時、泣いて盤にしがみついて離れなくなった話は有名ですね。
将棋にも”負けず嫌い”な性格は現れています。
渡辺明先生との棋聖戦でも藤井聡太先生は戦型をあえて”矢倉”に誘導し勝利しました。
矢倉は渡辺先生が最も得意とする戦型の一つで、羽生先生との3連敗から4連勝した伝説の竜王戦も”矢倉”で流れを変えていました。
相手の最も得意とする戦法を受けて立つのは、将棋界で一番負けず嫌いだと言われていた羽生先生のスタイルです。
その他、藤井先生は、悪手を指してしまった時や、ミスをしてしまった時には、自らの膝を叩くと言った仕草も見せます。
人一倍負けず嫌いな性格が勝利への執念そして努力を生むのでしょう。
技:”符号読み”という異次元の読み方
将棋を読む時は普通”脳内将棋盤”という頭の中の将棋盤を動かして読みをいれます。
頭の中に81マスの盤面と40枚の駒を想像だけで作りだし、自由に動かす。これだけでもかなり凄いのですが、天才は違うんです。
藤井聡太先生は”符号”で読みます。
8三玉、7三角成、同玉、8一銀打、4六角打、7二銀成…。
このように符号だけで読みます。
符号だけである程度のところまで瞬時に読んでしまって、指す前に確認として脳内将棋盤を使うといった感じです。
正直、符号だけでどうやって読めるのか理解できないですが、藤井先生自身がそう言っています。
このように普通のプロ棋士と違う読み方をすることで、コンピュータのような尋常ではない読みのスピードを生み出しています。
藤井先生はイベントなどで、たびたび超手数の詰め将棋を解くことがありますが、めちゃくちゃ早いですよね。
ああいうのって脳内将棋盤で駒を動かしながらだと、結構時間がかかると思うんですが、藤井先生は符号読みという特殊能力があるので、数秒で読み切れるのだと思います。
符号読みについて詳しくは下の記事をご覧ください。
体:詰め将棋の鬼
藤井聡太先生の数ある記録の中で一番スゴイのは”詰将棋解答選手権を12歳で優勝したこと”でしょう。
詰将棋解答選手権は大人やプロ棋士も参加するのですが、見ただけで嫌になるような何十手詰めという詰め将棋を何問も解かなくてはいけません。
そんな詰将棋の世界大会のようなところで12歳(当時小学6年生)で優勝したことは信じられないことなんです。
以下は12歳で詰将棋解答選手権で優勝したことについてのコメントです。
6年生で詰将棋選手権優勝は……とても現実とは思えないですね。(森下九段)
僕はその話を聞いた時、心臓が止まるかと思いましたから。(津江記者)
それぐらいのことですよね。(深浦九段)引用元:wikipedia
他にも将棋無双と将棋図巧が合わさった”詰むや詰まざるや”を9歳で解いてしまったという伝説があります。
この”詰むや詰まざるや”という詰め将棋は200題あり、解くのに数年かかります。
あの羽生先生も中断期間を入れて解き終わるのに7年かかったとおっしゃられています。
それを9歳で解き終わったのは化け物です。
これまでに解いてきた詰め将棋の量は1万を軽く超えるようで、この解いてきた莫大な詰め将棋の量が将棋の基礎力となって藤井先生のAI超えの強さの元になっているのではないでしょうか。