竜王戦の挑戦者決定戦で羽生善治が一手詰めを見逃して大頓死。
驚きすぎて「ひっ飛車ぁ!」と叫んでしまった対局相手の木村一基。
その後、何事もなかったかのように感想戦を始める羽生にさらに驚く木村一基。
後に羽生は「指し直したい一手」にこの対局を即答しています。
トップ棋士も頓死するんですね。
頓死とは
将棋用語で”頓死”というのは勝勢だった将棋を自身のミスで”負け”にしてしまうことです。
アマチュアの人なら読み抜け等があって頓死もよくあることなんですが、プロ棋士でもやってしまうんです。
勝利目前という将棋を一手のミスで負けにしてしまう。これほど悔しく、恥ずかしいことはありません。
プロ失格なんて思うかもしれませんが、あの羽生先生も大頓死をしたことがある一人なんです。
羽生善治の大頓死
2005年竜王戦の挑戦者決定戦三番勝負。
羽生善治四冠(当時)と木村一基五段(当時)が竜王戦の挑戦者を懸けて激突していました。
その第一局目で羽生先生の大頓死は起こりました。
横歩取りに進んだ将棋は羽生勝勢の展開に。
これは羽生先生が逃げ切れば勝ちという局面で、両対局者ともに”先手の羽生勝ち”だと思っていました。
この局面では王手がかかっているので羽生先生は”玉”を逃がさなければいけません。
この局面で考えられる手は以下の5通りです。
同玉、6四玉、6六玉、7五玉、7六玉
この中で、6四玉以外はどこに逃げても羽生勝ちになります。
しかし、なにを思ったか羽生は”6四玉”と指しました。
この”6四玉”を見た対局相手の木村一基は「ひっ飛車ぁ!」と驚きのあまり叫んでいたそうです。
そうなんです。これは”6五飛”の一手詰み。
詰まされるほう(一手詰み)に逃げてしまった羽生先生の珍しい大頓死です。
投了後の羽生善治
普通の人間なら、頭を抱えて深く落ち込むところですが、羽生先生は、投了したあと普通に感想戦を始めたそうです。
相手の一手詰みの見逃しに驚いた木村先生でしたが、その後の冷静に感想戦をする羽生先生に対しても驚いたそうです。
これが竜王戦の挑戦者決定戦の三番勝負の第1局目。
1局目こそ、大頓死で負けてしまった羽生先生でしたが、このあとの2局目と3局目を勝って見事、竜王戦の挑戦者になりました。
こういうところは「さすが」としか言いようがありませんね。
ちなみに、このことがきっかけかは定かではありませんが、これ以降、終盤に勝勢になっても羽生先生の顔は険しく、眉間にシワを寄せるようになったとの説があります。
指し直したい一手
ニコニコ超会議で行われたイベントでの質問に答えるコーナーにて。
「もし神様から昔の対局を一手だけ指し直せる権利をもらえたら、どの対局を指し直しますか?」
という質問に羽生善治は「一手詰めをうっかりして負けた」この一局を挙げていました。
普通だったら一手詰めは1秒立たないくらいで見つけなければいけないですが、さすがにその時は恥ずかしかったですし、血の気が引きました。王手をかけられて初めて、逃げる場所がないことに気付くってことがあるじゃないですか。あれを何十年ぶりかにやってしまいました。
と答えていた羽生。
しかし、その後の気持ちの切り替えは常人には真似できないものがありますね。