”ワープ角”
事件は菅井竜也先生が有名ですが、2009年には女流王位のタイトル戦で石橋幸緒女流王位(当時)が清水市代女流二冠(当時)との対局で”角のワープ”をしています。
別名”レントゲン角”とも言い、自駒の”歩”を飛び越えて”2二角成り”としてしまい石橋女流は反則負けになっています。
石橋幸緒vs清水市代
女流王位戦第二局(2009年10月14日)
- 先手:石橋幸緒 女流王位(当時)
- 後手:清水市代 女流二冠(当時)
2018年のB級1組順位戦での菅井竜也七段vs橋本崇載八段戦で”ワープ角”の反則が出てから、もう一つの”ワープ角”事件が話題になりました。
2009年の女流王位のタイトル戦でのこと。
石橋幸緒女流王位(当時)勝勢で迎えた最終盤128手目に清水女流二冠(当時)が3一玉と指した局面です。
次の129手目、石橋女流が指したのは”2二角成”でした。
この”2二角成り”は6六にいた角が自駒である”4四の歩”を飛び越えて”2二”に着地しています。
でました!”角のワープ”です。
もちろん指した本人は気付いていないので、自身満々で指したそうです。
しかもこの”2二角成り”は投了級の一手なんですね。
当時の石橋女流は、この手を指したことで、相手の清水女流は投了するだろうと読んでいました。
なので、ジャケットを羽織り、インタビューの準備をする石橋女流。
しかし、対局相手の清水女流は怪訝な表情で盤面を見つめています。
当時の観戦記を担当していた小暮氏も「あっ…えっ…」と言葉にならない様子。
そんな中でも冷静だったのが記録係の青年でした。
清水女流の手番なので、秒読みを始めます。
記録係「30秒~」
冷静な記録係
怪訝な清水女流
驚く観戦記担当の小暮氏
そして、やっと気付いた冷や汗ダラダラの石橋女流。
清水女流の手番にも関わらず、石橋女流はここで投了。
パニックだったのか、なぜか着たばかりのジャケットを脱ぐ石橋女流でした。
その後、立会人だった鈴木大介九段が汗だくで対局室に駆け込んできたそうです。
石橋女流本人によるツイート
上のツイートを引用リツイートした石橋女流。
記録係は正しかった!?
反則である”2二角成り”を指したあと、清水女流の手番になり、秒読みを始めた記録係でしたが、128手にて石橋女流の反則負けで決着し、129手目の”2二角成り”は反則手なので記録上は存在していません。
しかし、129手目”2二角成り”のあとに秒読みを始めた記録係の対応は完璧だったと言えます。
対局規定では…。
「終局後は反則行為の有無にかかわらず、投了時の勝敗が優先する(投了の優先)。」
とあります。
仮に”2二角成り”の反則に清水女流が気付かず”投了”していた場合は、反則をしたにも関わらず石橋女流の勝ちとなります。
対局後になんらかのペナルティ(処分)は下ると思いますが…。
反則の手を指した、または指された場合は、反則であることを指摘しないといけないのです。
なので、記録係の秒読みは正しかったと言えます。