将棋には”格言”と呼ばれる簡単に将棋の基礎を言い表したものがあります。
初心者や級位者は要所要所において、これらの格言を思い出すことで、将棋の本質に迫った対局ができるようになります。
有段者でも将棋の格言を改めて学ぶことで、基礎力を鍛え直しましょう。
以下、序盤中盤終盤に分けて役に立つ格言をピックアップしました。
目次
【序盤の格言】
居玉は避けよ
居玉は防御力が低いので、しっかりと囲ったほうがいいという格言です。
”藤井システム”など居玉で行う戦法もありますが”中住まい”のように玉は一つ上に移動するだけで”王手飛車取り”なども防げますし、利点が多いので居玉は避けたいです。
玉飛接近すべからず
”飛車”は攻撃の要なので”飛車”の周辺で戦いが起こりやすく”玉”と”飛車”が近づいているのは、よくないという格言です。
”玉”と”飛車”が近づいていると、王手飛車取りもかかりやすくなったり”玉”を逃がすために”飛車”を見捨てなければならない局面がでやすくなります。
そのため”玉”と”飛車”はできるだけ離れていたほうが安全です。
角交換に5筋の歩を突くな
角を交換したら、角の打ち込みに気をつけないといけません。
この場合、5筋の”歩”を突いていると”角”の打ち込み場所が生じやすいため、この「角交換に5筋の歩を突くな」という格言があります。
5筋の”歩”を突いていると”飛車”のナナメ下に”角”を打たれ”馬”を作られやすいというデメリットがあります。
【中盤の格言】
桂の高跳び歩の餌食
序盤”桂馬”を跳ねすぎると、狙われやすくなります。
特に”桂馬”の天敵は”歩”です。
”桂馬”の頭に”歩”を打たれたり、指されたりすると”桂馬”はその”歩”を取ることができません。
そして”桂馬”は後ろへ移動できないので”歩”の餌食になります。
桂馬を跳ねる際は、十分に読みをいれましょう。
5三のと金に負けなし
”と金”は”金”の動きをしますが、取られてしまうと”歩”に戻ります。
そのため、”と金”は損することが少ない駒で、相手の囲いの弱体化等に非常に約に立ちます。
そして、中終盤において”5三”または”5七”の”と金”は相手の”金”や”銀”と交換できる可能性が高く、勝利に近づく大きな”と金”となります。
大駒は近づけて受けよ
”飛車”や”角”などの大駒は合い駒などをして、引き寄せてから受けるのがいいという格言です。
近づけて”金”などで大駒に当てながら受けると、手番を握れるというメリットがあります。
「大駒は離して打て」という格言もあるように、攻めの時は離して打つのがいい手。
逆に受ける時は近づけて受けるのがいい手になります。
下段の香に力あり
持ち駒の”香車”はできるだけ下のほうに打ったほうがいいという格言です。
「大駒は離して打て」という格言もあるように、利きの長い駒はできるだけ離して打ったほうがいいという格言で、下段に香車を打つことで、歩の連打による釣り上げもやりにくくなりますし「金底の歩岩より固し」という格言のように”歩”ではなく”香車”を守りに活用できる場合もあります。
と金の遅早
「ときんのおそはや」と読みます。
”と金”は歩を敵陣に打ち、一つ前に進んでやっと”と金”になれます。
と金を作るのには手数がかかりますが”と金”を活用すれば、確実に相手の囲いを弱体化させることができます。
終盤はこの”と金”の速度計算が大事になり”と金”の攻撃が間に合うかどうかが勝敗に直結するという格言です。
”と金”の速度計算は重要なので要チェックです。
二枚替えなら歩ともせよ
大駒でも、小駒二枚との交換なら得になるという格言です。
大駒一枚と”金”と”銀”の二枚の交換なら金と銀のほうが価値が高いですよね。
さすがに大駒と”香車”と”歩”の二枚替えは損だと思いますが、二枚替えは積極的に行って良しということです。
「二枚替えなら歩ともせよ」は少し盛りすぎているかなとも思います。
なので、大駒と”銀”と”桂馬”の二枚替えなら良しと考えてもいいかもしれません。
両取り逃げるべからず
両取りをかけられた場合、基本的に両方の駒を助けることはできません。
そのため、どちらを逃がす手ではなく、さらに有効な手を指したほうがいいという格言です。
相手に好きな方を取らせてる間に、相手玉に迫る手を指したり「玉の早逃げ八手の得」と言うように早逃げしたりと、有効な手を指すことができます。
両取りをされたからと言って両方を取られてしまうわけではないのです。
逃がしても一枚取られ、逃がさなくても取られるのは一枚だけなのです。
だったら逃げずに別の有効な手を指したほうがいいですよね。
【終盤の格言】
一歩千金
”歩”は最も価値が低い駒ですが、その分、最も使い道のある駒です。
”継ぎ歩・垂れ歩・叩き・打ち捨て”などの小技には”歩”が最適。
そして”飛車”や”角”の利きを合い駒する時も、最も価値の低い”歩”が最適。
このように、特に中終盤において”歩”はとても重要な役割を果たします。
最終盤に”歩”が一枚足りなかったので、詰まなかった…なんてことも多々あります。
「歩は大切に」という格言です。
玉は下段に落とせ
「中段玉寄せにくし」という格言があるように、相手の玉は上から抑えつけるように、下段に落とせば寄せやすくなります。
相手の玉が下段にいれば”歩”と”金”の二枚で詰ますことも可能です。
下段に落さずにいると最悪の場合入玉されてしまいます。
玉は包むように寄せよ
王手をかけて相手玉を逃がしてしまうよりも、退路を封鎖しながら、囲うように寄せると相手玉を詰ましやすくなるという格言です。
金底の歩 岩より固し
最下段に”歩”その上に”金”でかなり強固な壁になります。
特に”飛車”や”龍”の横利きを防ぐのに有効です。
ただし”二歩”には注意しましょう。
馬の守りは金銀三枚
”馬”は強力な駒ですが、受けに使用するともっと能力を発揮しやすいという格言です。
得に”馬”自陣に引き付けておくと守りの強度がかなり高まります。
本当に金銀三枚分あるのかというと、そうではないので注意。
金銀三枚で囲っているかのように堅いという例えです。
王手は追う手
王手をかけることで、相手玉が逃げ自分の攻め駒が相手玉から遠ざかることがあります。
さらに、王手をかけると相手玉が詰みにくいところへ逃げていくこともあるので、むやみに王手をするべきではないという格言です。
王手をかける時は意味のある王手をかけましょう。
玉の早逃げ八手の得
中終盤で、あらかじめ玉を逃げておくと得をすることがあるという格言です。
”米長玉”が良い例です。
特に終盤で、早逃げをすることで一手稼ぐことができたりします。
このように早逃げが好手となることがあります。
「玉の早逃げ八手の得」といっていますが、実際は八手も得することはありません。
終盤は駒の損得より速度
終盤では、詰ました方が勝ちなので、駒の損得よりも、相手よりも早く寄せることが優先になるという格言です。
そのため、取れる大駒を取らずに相手玉に一手だけ迫る手が好手になったりします。
将棋とは駒を取るゲームではなく、相手玉を詰ますゲームであることを終盤に思い出しましょう。
長い詰みより短い必至
長い詰みで読み抜けがあったりすると逆転負けにつながります。
次に確実に詰ませる必死なら、自玉の安全さえ読み切っていれば、確実に勝つことができます。
それに読む量が少ないので、時間がない時などは「長い詰みより短い必死」です。