現役最年少棋士である17歳の藤本渚四段(当時)が対局場を間違え、不戦敗となってしまいました。
藤本四段はデビューから6連勝中であったため、惜しまれる敗北となりました。
対戦相手だった神谷八段は藤本四段の不戦敗を告げられ手を挙げてびっくり。
その後、藤本四段は電話にて神谷八段に謝罪しました。
対局場を間違え不戦敗
2023年2月6日。
竜王戦6組のランキング戦三回戦の藤本渚四段(当時)と神谷広志八段(当時)の対局が東京の将棋会館で行われる予定でした。
当日、東京の将棋会館では、午前9時半に入室した神谷八段は盤の前に座り、対戦相手の到着と、対局開始の掛け声を待っていました。
それから、沈黙の20分が過ぎた午前9時50分頃。
対局室に将棋連盟の職員が入室し「藤本四段が大阪に行ってしまい本日の対局はできません」との連絡が入ります。
そのことを聞いた神谷八段は手を挙げて仰天。
「まさか、そんな」と言い、すぐに荷物をまとめて対局室を後にしました。
開始時刻である午前10時を待たず、神谷-藤本戦の盤駒は片付けられたようです。
これにより、デビューから無敗の6連勝中だった藤本四段の連勝は止まってしまいました。
もったいないですね。
藤本四段は終盤力に定評のある若手有望株で、2023年時では現役最年少棋士でした。
もしかしたらそのまま無敗で29連勝なんてあったかもしれないのに…。
謝罪の電話
「対局場所を間違えてしまいました…」
と、藤本四段は対局場の間違えに気付いたあと、師匠である、井上慶太九段に電話をしました。
その後、2人は関西の将棋会館で落ち合い、神谷八段がいる東京・将棋会館に電話をかけ謝罪をしたそうです。
午前10時半頃。
関西の将棋会館の事務室から東京の将棋会館に電話かかかります。
まずは師匠である井上九段が神谷八段に謝り、続いて藤本四段。
「自分の確認不足で大変申し訳ありません。」
と謝罪しました。
それに対して、神谷八段は
「ミスは誰にでもある。次にしないことが大事だよ」
と優しい言葉をかけられていました。
以下、神谷八段のコメントです。
神谷八段のコメント
「戦う気満々で闘志を燃やしていたところだったので、力が抜けました」
「(藤本は)一番下の孫よりも2つだけ年上で、公式戦での44歳差もある対局は初めてで楽しみにしていた」
「孫と同じぐらいの棋士でかわいいと思っているし、全然気にしていません。」
「妙な形で連勝が止まってしまい、無念だと思います。」
「若い有望な棋士なので、前を向いてほしい」
と藤本四段を気遣うコメントが見受けられました。
なぜ対局場間違えが起こったのか?
タイトル戦を除き、対局は主に、東京の将棋会館と関西の将棋会館のどちらかで行われます。
今回のケースだと…。
神谷八段は関東所属の棋士。
そして藤本四段は関西所属の棋士でした。
それぞれ、関東所属の棋士の対局は主に東京の将棋会館で行われ、関西所属の棋士は主に関西(大阪)の将棋会館で行われます。
今回のように関東所属の棋士と、関西所属の棋士の対戦となると、基本的には段位が上の対局者の所属する将棋会館で対局が行われます。
そのため、今回は段位が上で先輩である神谷八段の所属する東京の将棋会館で対局が行われる予定でした。
しかし、関西所属の藤本四段はいつものように関西の将棋会館で対局が行われるものと勘違いしていたようです。
ちなみに不戦敗は2016年の叡王戦”久保vsと豊島戦”以来の7年ぶりのできごとでした。
ファンの声
「人は失敗してこそ成長するんだよ。渚君はもう二度と対局場を間違えることはないだろうし。千田はもう二度と先後を間違えない。菅井はもう二度と角をワープさせないだろうし、山ちゃんはもう二度と3六銀直を指すことはない。」
「淡路先生は二歩を何度もやっているぞ」
「勝負の場面では本来はあってはならないことだし、大きな損失だけど、本人には良い勉強になり、たぶん二度としないでしょう。」
追記
その後に行われた第73回NHK杯戦の予選 1回戦”畠山成幸戦”でも藤本四段は不戦敗となっていますが不詳細は不明です。