プロ棋士であり東大院生そして将棋AI開発者でありエンジニア、しかも吉本興業所属で、絶対音感の持ち主。
「兄たちは馬鹿だから東大に行った。自分は頭がいいから棋士になった」と
東大生とプロ棋士はたびたび比較の対象になったりしていますが、この度、マルチな才能を持った東大卒のプロ棋士が誕生しました。
谷合廣紀とは
【谷合廣紀】
- 1994年1月6日 生まれ
- 東京都中央区 出身
- 中座真 門下
【趣味】
- ピアノ
- プログラミング
- 散歩
【特技】
- 後ろ向きでピアノを弾くこと
- 目隠し将棋積分(目隠し将棋積分で世界最強を目指している)
趣味のピアノは約20年間ピアノ教室に通っていて、曲を聴いたら、そのままピアノで弾ける絶対音感の持ち主です。
目隠し将棋積分についてはこちらの動画をご覧ください。
東大院生としての谷合廣紀
東大生卒でプロ棋士になったのは、片上大輔先生に続いて二人目。
女流棋士では渡辺弥生女流も東大卒です。
谷合先生は東京大学を卒業されて、現在は東京大学の大学院生です。
東京大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程に在籍中です。
覚えきれないぐらい長い名称ですね…。
ちなみに東京大学工学部電気電子工学科卒業です。
東京大学に在学中は授業をサボって雀荘に行くことが多かったそうなんですが、ちゃんと卒業されていますし、現役で東京大学に合格されています。
子供の頃は、羽生先生もやられていた公文式をやっており、小学校6年生の頃には高校生ぐらいの課程まで進んでいた秀才ぶり。
高3になる頃に、以前よりあこがれがあった東京大学を第一目標とすることを決め、現役合格されています。
谷合先生曰く…。
「東大合格より、プロ棋士になるほうが難しかった」
とおっしゃられています。
それもそのはず、東京大学は一発合格ですが、プロ棋士になったのは26歳の時で、年齢制限ギリギリなんですね。
プロ棋士としての谷合廣紀
谷合先生はアマ有段者の祖父に将棋を教えらたようで、教えるのが、かなり上手な祖父だったとのこと。
そして、将棋連盟の将棋道場に通うようになり、そこで同い年の渡辺和史先生と香川愛生女流と知り合います。
彼等は小学生時代からの友人で、一緒にYouTubeの動画に出演されたりもしています。
現在は振り飛車党の谷合先生ですが、当時は”右玉”を指していたそうで、理由は研究量が少なくて済むからとのこと。
研究量が少ない分、勉強のほうにも時間を当てることができたそうです。
やっぱりこういうところも頭いいですよね。
しかし、前述しましたが、谷合先生がプロ棋士になったのは26歳の時で、年齢制限ギリギリの時。
17歳で三段に昇段してから、プロ棋士になるまで苦節の8年半を過ごしました。
途中で諦めて企業に就職しようと思ったこともあったようです。
そんな時、師匠である中座先生は谷合先生に
「君に上がれないわけがない」
と激励の言葉を送っています。
中座先生も年齢制限ギリギリの劇的なプロ昇段を果たされたプロ棋士で、この言葉に勇気が詰まっていますね。
晴れて、プロ棋士になられてからは四間飛車を指す振り飛車党として、棋王戦の本戦トーナメントに進出するなど活躍されています。
ちなみに、棋士になって一番うれしかったことは”wikipedia”に項目ができたことだそうです(笑)
”prelude”将棋AI開発者としての谷合廣紀
谷合先生は本も出版されているのですが、将棋ではなくて、先にコンピューターの本を出すことになっています。
”Pythonで理解する統計解析の基礎”という専門書です。
東大修士課程在籍中に執筆し、出版しました。
”Python”というのはプログラミング言語の一つです。
プログラミング言語・Pythonの国際カンファレンス”PyCon JP 2021”にも登壇し、”将棋とPythonの素敵な出会い”と題した基調講演を行ったこともあります。
ところで将棋とプログラミングといえば?
将棋AIですよね。
谷合先生は自作で将棋ソフトも作っていて、世界コンピュータ将棋選手権にも出場されています。
プログラム名は”prelude”で、なんと四間飛車しか指しません。
第32回世界コンピュータ将棋選手権で”prelude”は7勝1敗の成績で一次予選を突破しましたが、二次予選では3勝5敗1分の成績で決勝進出とはなりませんでした。
プロ棋士の出場記録としては、過去に”TACOS”を開発した飯田弘之七段に続いて二人目です。
ご自身が四間飛車中心の振り飛車党で、ソフトも四間飛車しか指さないとなると、研究用としても使っているのかもしれませんね。
エンジニアとして谷合廣紀
2019年に経済産業省主催の自動車技術会主催のシミュレーション競技”AIエッジコンテスト”で2位入賞を果たし、”自動運転AIチャレンジ”に出場。
そこで優勝した後に、スカウトされた”ティアフォー”でパートタイムエンジニアとして、車載画像認識のアルゴリズム開発に携わっておられます。
谷合先生曰く…。
「自由度が高く、自分のアイデアを聞いてもらえる環境なのでやりがいがあります。学びながら、収入を得られるのもありがたい。自動運転は今後が楽しみな注目分野なので、自身の経験を活かして少しでも貢献していけたらと思っています」
「エンジニアとして、お金をもらっている限り重要視すべきは”対価に見合う成果”を出す」
と述べられており、
東大院生であり、プロ棋士であり、将棋AI開発者であり、エンジニアでもあるなんて凄いですね。
「将棋は多くて年に5、60局なので、比較的自由に時間が使える。空いた時間を活用して、違う分野でも活躍できたらと高校生時代から思っていたので、大学も受験しました。将棋1本に絞る必要はないと思っていたので、エンジニアの仕事も始めました。エンジニアは、働く時間や場所を選ばずできる仕事なので、将棋とも両立可能です」
「それぞれに全力をそそげるからバランスがとれる」
とのこと。
将棋は指したいときに指して、研究をしたいときは研究をする。対局前の3、4日は将棋に専念し、論文の締切前の1、2週間は執筆に専念するそうです。
ご自身の性格を”没頭している時の集中力は高い一方、飽きっぽい”とおっしゃられているので、一つに絞らないからこそ、飽きずにそれぞれに没頭できるのでしょう。
吉本興業所属としての谷合廣紀
吉本興業の東大出身の社員と知人だったことが縁で、吉本入りが決定。
2022年8月12日から吉本興業所属のプロ棋士としても活動しています。
もちろん吉本初のプロ棋士です。