この記事では、菅井竜也先生が2017年の王位戦七番勝負で見せた巧みな三間飛車の序盤戦術をご紹介しています。
初手はもちろん、2手目でも4手目、6手目でも飛車をそのまま三間飛車にすることができる画期的な新序盤です。
このような三間飛車の新序盤を駆使し、菅井先生は見事”王位”のタイトルを奪取されました。
10手目に3二飛車
まずはじめにご紹介するのが、実際に王位戦の第六局目で菅井先生が採用された三間飛車戦法です。
その時の中継解説で今泉先生の言葉が記述されています。
「2、4、6手目ではなかったね。10手目が正解だったわ」
これは菅井先生が10手目に3二飛車と三間飛車に構えたことに対する感想です。
何手目で飛車を振るかを予想していたのでしょう。
こちらが10手に3二飛車とした局面です。(先手:羽生 後手:菅井)
飛車の上に”金”
こんな奇抜な三間飛車見たことないですね。
ちなみに手順は初手から…。
7六歩、3四歩、2六歩、3二金、2五歩、3三角、同角、同金、6八玉、3二飛車
各交換後に同金として金が3三に上がったので「阪田流向かい飛車か!」との声も控室ではあがっていたようですが、実際にはその後、3二飛車と三間飛車に構えます。
おそらくプロの将棋史上この局面になったのはこの羽生対菅井の王位戦第六局が初めてだったはずです。
そして、この独創的な構えから勝利したのは菅井先生だったということからも、戦法としても十分成り立っていることが証明されています。
そして近年、三間飛車戦法には斬新な序盤工夫がなされ、将棋の可能性に広がりを見せています。
ここからは先ほど記述した気になる2,4,6手目に3二飛車とする三間飛車をご紹介していきます。
2手目に3二飛車
これは今泉先生が創案し、升田幸三賞をも受賞した画期的な指し方です。
手順は…初手から…。
7六歩、3二飛車
この序盤を見たプロ棋士の先生方の反応は…。
「論理的に不可能だと思っていた」
「コロンブスの卵的な大きな発見」
このように称賛と驚きの感想が寄せられています。
もちろんこの後の序盤も乱戦含みの定跡もちゃんと整備されています。
詳しくは下記の本をご参考ください。
4手目に3二飛車
2手目があるなら、4手目もあります。
手順は…。
7六歩、3四歩、2六歩、3二飛。
このあと角交換されて”6五角”と打たれるのが気になりますが、もちろんここからの乱戦にも対応可能な定跡研究があります。
6手目に3二飛車
ゴキゲン中飛車の出だしかと思いきや、飛車は5筋を通り越して3筋に。
これも王位戦で菅井先生が採用していました。
手順は…。
7六歩、3四飛、2六歩、5四飛、2六歩、3二飛。
初手に7八飛車
先手番で初手に7八飛車と三間飛車に振ることもできます。
詳しくは門倉先生著の以下の棋書をご覧ください。
どれもこれも角交換からの乱戦が怖い…。
このように考えてしまうのも無理もありません。
なぜなら、そもそもこれまではこのような指し方は成立せず「振り飛車側の不利」と結論付けられていました。
しかし、その定跡に果敢に挑み、「革命的新手」を発見した棋士の方々はやはり「天才」です。
その後の詳しい変化手順はこの記事ではご紹介しませんが、将棋は本当に深く、よくできてるなと感心せざるを得ません。